南方貨物線は、完成目前で止まり、営業列車は一度も走っていません。
ここからは経緯ではなく、もし構想に近い形でつながっていたら、のシミュレートです。
対象は南方貨物線だけではありません。
岡多線・瀬戸線系統、城北線、枇杷島・稲沢の接続まで含めて考えます。
効果の核は、名古屋が全国物流を独占することではありません。
名古屋駅周辺と東海道本線の一部に集まっていた貨物を、経路・拠点・時間帯へ分散させることです。
数字は公開情報を踏まえた仮定です。
実際のダイヤや設備では変わります。
南方貨物線が開業していたら
計画は、大府から笠寺を経て名古屋貨物ターミナルへ至る、約19.5kmの貨物別線です。
全体を名古屋駅まで含めると、約26kmの整理になります。
大府〜笠寺は東海道本線に並走し、笠寺から西へ折れてターミナルへ入る構造です。
大府 │ 笠寺 │ 名古屋貨物ターミナル
開業していれば、次が期待できます。
- 大府方面と名古屋貨物ターミナルを直接つなぐ
- 名古屋駅周辺を通る貨物を減らす
- 稲沢での折り返しや進路変更を減らす
- 東海道本線の旅客と貨物を分ける
- 名古屋港・中京圏と東海道貨物幹線のつなぎをよくする
未完成のいま、ターミナルと東京方面の貨物は、稲沢経由の折り返しを強いられた、との整理です。
朝6〜9時の貨物規制
笠寺〜名古屋間には、朝6時から9時まで貨物が通れない、という条件があります。
旅客の所要は11〜12分程度でも、貨物の問題は走行時間ではありません。
通過禁止による待機です。
東京方面 → 大府 → 笠寺
│
└─ 6:00〜9:00は名古屋方面へ進めない
いまの貨物は、次のどれかを迫られます。
- 6時前に笠寺〜名古屋を抜ける
- 9時以降まで待つ
- 前夜や早朝に発車をずらす
- 別経路を使う
- ターミナル到着を遅らせる
南方貨物線があれば、笠寺から名古屋駅へ進まず、ターミナルへ折れられます。
東京方面 → 大府 → 笠寺
│
└─ 南方貨物線 → 名古屋貨物ターミナル
通常時間帯なら、短縮は10〜30分程度にとどまる場合もあります。
朝の規制にかかる列車では、1.5〜2.5時間程度の待機を避けられる、という仮定です。
岡多線・瀬戸線・城北線までつながっていたら
愛知環状鉄道の前身・岡多線は、岡崎から豊田・瀬戸を経て多治見方面へ向かう構想でした。
瀬戸線は、瀬戸から高蔵寺、勝川、小田井付近を経て稲沢方面へ向かう計画です。
岡多線とつながれば、岡崎〜稲沢で東海道本線をバイパスする役割が想定されていました。
岡崎 → 豊田 → 瀬戸 → 高蔵寺 → 勝川・小田井 → 稲沢
貨物に使えていれば、三河・豊田と中央線、長野方面、稲沢・関西方面を、名古屋駅を通さずに運べた可能性があります。
ただし、いまの愛知環状鉄道は旅客主体です。
本格的な貨物には、複線化、待避線、信号、軸重、電化方式などの改良が要ります。
城北線は勝川と枇杷島を結ぶ約11.2kmで、国鉄時代の貨物バイパス構想を背景に持ちます。
北側の連絡として使えていれば、貨物は名古屋駅周辺を避けられます。
高蔵寺・瀬戸 → 勝川 →(城北線)→ 枇杷島 → 稲沢・名古屋貨物ターミナル
枇杷島周辺は、東海道本線、稲沢線、城北線、ターミナル方面の接点です。
「枇杷島デルタ」は名鉄側の三角線と混同しやすいので、ここでは各接続点を別々に扱います。
一体化した貨物ネットワーク
東・南・北のバイパスが揃うと、行き先と時間帯で振り分けられます。
- 東京・静岡方面〜名古屋貨物ターミナル … 大府〜南方貨物線
- 三河・豊田〜名古屋港 … 岡崎・大府〜南方貨物線
- 三河・豊田〜中央線・長野 … 岡多線〜瀬戸〜高蔵寺
- 中央線・瀬戸〜稲沢・東海道方面 … 瀬戸線〜勝川〜城北線〜枇杷島
- 名古屋貨物ターミナル〜稲沢 … 稲沢線または北側連絡
- 東海道本線の直通貨物 … 従来経路を残す
全部をバイパスに移す必要はありません。
方向、重量、時間帯、荷役に応じて選べることが要点です。
独占ではなく、分散
この網が完成しても、名古屋が日本の物流を独占するわけではありません。
拠点は東京貨物ターミナル、名古屋貨物ターミナル、稲沢、吹田、名古屋港などに分かれます。
効くのは、名古屋周辺の集中を崩すことです。
- 名古屋駅周辺の貨物
- 東海道本線・名古屋地区に集まる貨物
- 稲沢での折り返し
- 朝6〜9時の規制後に固まる貨物
- ターミナルと本線を結ぶ貨物
- 三河・豊田と中央線を結ぶ貨物
経路が複数あると、障害で全部が止まりにくくなります。
朝の抑止を避け、到着を平準化し、旅客を安定させやすくなります。
平常時の短縮は、1本あたり数十分にとどまる場合もあります。
価値がはっきりするのは、事故や災害のときです。
本線の名古屋地区が不通でも、南方、岡多・瀬戸、城北、稲沢での組み替え、港との組み合わせ、一部トラック代行、と振り分けられます。
完全な代替にはなりません。
全貨物が同時に止まるリスクは下がります。
輸送量の試算(仮定)
貨物1編成を最大650トン、10トントラック約65台分とします。
年間300日、満載、という上限寄りの計算です。
- 追加・安定化が1日5本 … 約97.5万トン/年(トラック約9.75万台)
- 10本 … 約195万トン/年
- 20本 … 約390万トン/年
実際は経路変更や遅延削減が中心で、新規貨物はこの一部です。
朝規制の回避だけでも、1日数本が安定すれば、年間数十万トン規模の余力、という見方もあります。
網全体では、年数十万〜数百万トンの余力があり得る、という幅です。
JR貨物全体の近年の輸送量は約2,700万トン規模です。
日本全体を倍にする話ではありません。
東海道の中京圏で、数%から十数%の余力、という位置づけです。
実現しても残る制約
- 愛知環状鉄道は旅客主体。貨物には設備改良が要る
- 岡崎〜高蔵寺は距離や勾配で本線より不利な区間があり得る。重量貨物の全部移しはしない
- 自動車部品は多頻度・小口が強く、鉄道よりトラックが向きやすい場合がある
- JR貨物、JR東海、愛知環状、東海交通事業、名古屋臨海鉄道、港湾の調整が要る
- 拠点分散には、線路だけでなく荷役、倉庫、道路、集配がセット
まとめ
- 南方貨物線の役割は独占ではなく、名古屋周辺の貨物分散
- 朝6〜9時の本線規制を、笠寺からターミナルへ折れて回避できる
- 岡多・瀬戸・城北までつながると、東・南・北のバイパスになる
- 平常時の時短は中程度。効くのは異常時の冗長性
- トン数は仮定。新規貨物より、安定運行と振り分けが本体
完成していれば、名古屋周辺は「貨物が集中する場所」から、「貨物を選んで振り分けるハブ」に近づいていた、というシミュレートです。

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