簗和生(やな・かずお)農林水産相(47)が、地元・栃木県の那須烏山市と那珂川町の道路予算を「大幅にカットした」と発言していたと、週刊誌が報じました。
簗氏は2026年10月2日夕方の記者会見で、発言をおおむね認めました。
臨時国会が召集された10月5日には、報道された音声が自分のものだと認め、発言を撤回して謝罪しました。
一方で、国土交通省に予算を減らすよう働きかけたことは否定し、高市早苗首相の指示を受けて続投する考えを示しています。
本記事では、何が報じられたのかと、2つの市町の予算が実際にどれだけ減ったのか、道路予算が決まる仕組みを分けて書きます。
記載は2026年10月5日時点の報道と公表資料に基づきます。
いま分かっていること(10月5日時点・報道ベース)
- 報じられた発言 … 2026年5月、地元の自民党支部の非公開の懇親会で「那須烏山市と那珂川町の令和8年度の道路予算については、大幅にカットをしました」と話したとされる
- 撤回と謝罪 … 10月5日、音声が自分のものだと認め、「極めて不適切」として発言を撤回し謝罪した
- 本人の説明 … 国交省に箇所付けの結果を問い合わせ、それを会合で報告しただけで、予算を減らすよう働きかけた事実はないと説明
- 実際の予算 … 国の交付金は、那須烏山市が前年度から約63%減、那珂川町が約54%減。栃木県全体では約11%増えていた。音声で挙げていた減り幅とほぼ同じ数字
- 国の説明 … 国土交通相は「報道されているような形で道路予算が削減された事実はない」としている。国交省の確認結果は、5日時点で公表されていない
- 進退 … 高市首相から「引き続き全力で仕事をせよ」と指示を受け、辞任を否定
- 国会 … 野党の一部は辞任を要求。7日からの代表質問や、来週の予算委員会で追及する構え
何が報じられたか
報道によると、簗氏は2026年5月24日、自民党大田原支部の総会のあとに開かれた非公開の懇親会で、地元の道路予算について話しました。
その中で「那須烏山市と那珂川町の令和8年度の道路予算については、大幅にカットをしました」と発言したとされています。
理由として、首長の政治姿勢や、衆院選での票数を挙げていたとも報じられています。
さらに「自民党の議員に頼って、インフラの予算が必要だという所に多く回すのが当たり前だ」という趣旨の発言もあったとされます。
音声には「政権与党の議席がなくなった地域、その地域の予算はごっそり削られます」「民意が与党の議員いらないって言っているんですから」という発言も含まれていたと報じられています。
報じた週刊誌は、発言の音声データを入手したとしています。
音声の中では、「那須烏山市については前年比の64%減、3分の1にしました」「那珂川町は54%減にしています」と、減らした割合まで挙げていたと報じられています。
簗氏は10月5日、この音声が自分のものだと認めました。
那須烏山市と那珂川町は、どちらも簗氏の選挙区の中にあり、2月の衆院選で簗氏が苦戦した地域だと伝えられています。
2つの市町の首長は、どちらも衆院選で簗氏を支援しなかったとされています。
会見は1日に2回
簗氏は当初、「大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄については、回答は控えたい」と繰り返していました。
10月2日午前の閣議後会見でも、この件の質問に対して、回答を控える趣旨の発言を20回ほど繰り返したと報じられています。
その後、同じ日の午後5時半ごろに、あらためて記者会見を開きました。
2回目の会見では、音声は「聞いていない」としながらも、報道の内容を確認したうえで「そういう発言をしたんだというふうに思う」と述べました。
そのうえで「誤解を招く言いぶりがあれば、真摯に受け止める」と話しています。
国交省に予算を減らすよう働きかけたかどうかについては否定し、国交省に「問い合わせをして、確認した」と繰り返しました。
高市早苗首相とは、進退について話していないと説明しています。
簗氏の説明|箇所付けの結果を報告しただけ
簗氏は2回目の会見で、発言の中身について次のように説明しました。
国交省に問い合わせて、箇所付けの結果の報告を受け、その内容を自民党の支部の会合で報告した、というものです。
箇所付けは、国の予算を、どの事業のどの場所にいくら配るかを決めることです。
国交省に予算を減らすよう頼んだのかと問われると、「問い合わせをしたということで、意図的なものを伝えたということはありません」と答えています。
そのうえで、「自民党の身内の会ということもあって、少し誤解を生むような発言をしてしまった」と述べました。
何が誤解だったのかについては、自分が行政に働きかけて予算が減ったわけではないのに、そう受け取れる言い方になってしまった点だと説明しています。
発言の意図は、応援してくれている人の気持ちに応えたいことや、党内でそうした立場にいることを伝えたかったため、としています。
この説明どおりなら、予算が減った結果を、自分が減らしたかのように話したことになります。
10月5日|発言を撤回して謝罪、続投へ
簗氏は10月4日、地元の視察先で記者団の質問を受けましたが、答えたのは視察に関することだけでした。
臨時国会が召集された5日、簗氏は官邸で高市首相に報告したあと、国会内で記者団の取材に応じました。
報道された音声は自分のものだと認め、道路予算を大幅にカットした、首長が自民党の国会議員はいらないという行動をとった、といった発言を撤回し、謝罪しました。
「私の意向で予算が左右できるかのような発言をしたことは極めて不適切」「公の立場にある者として、発言にいっそう慎重であるべきだった。不徳の致すところで、深く反省している」と述べています。
一方で、国交省など担当の省庁に予算を減らすよう働きかけた事実はないと、あらためて否定しました。
高市首相からは「引き続き農林水産行政の推進に向けて、全力で仕事をせよ」と指示を受けたと明らかにしています。
進退については「職務の遂行に全力を尽くすことで、信頼の回復に努めたい」として、辞任を否定しました。
那須烏山市と那珂川町の予算はどれだけ減った?
問題になっているのは、国が自治体に配る社会資本整備総合交付金です。
那須烏山市によると、主に市道の改築に使っている予算です。
| 自治体 | 2025年度 | 2026年度 | 増減 | 2026年度の要望額 |
|---|---|---|---|---|
| 那須烏山市 | 6531万1千円 | 2426万7千円 | 約63%減 | 4783万6千円 |
| 那珂川町 | 4934万2千円 | 2262万4千円 | 約54%減 | 7208万円 |
| 栃木県全体 | ― | ― | 約11%増 | ― |
県全体では増えている中で、2つの市町だけが大きく減った形です。
しかも、音声の中で簗氏が挙げていた「那須烏山市は64%減」「那珂川町は54%減」という数字は、実際の減り幅とほぼ同じです。
ただ、簗氏は「国交省に問い合わせて、箇所付けの結果を報告しただけ」と説明しています。
結果を前もって知っていたのであれば、数字が一致していても説明はつくため、これだけで関与があったとまでは言えません。
那須烏山市では、2024年度から2年続けて、要望した額を上回る額が配分されていました。
両市町の担当者は「ここまで減額されることはなかった」と話し、那須烏山市の担当者は「なぜ減額されたのか、理由がわからない」としています。
予算が減ったことと、簗氏の発言との間に関係があるのかどうかは、10月5日の時点でも確認されていません。
なぜこの2つの市町だけが大きく減ったのかを、国交省が具体的に説明できるかどうかが焦点です。
道路予算(社会資本整備総合交付金)はどう決まる?
社会資本整備総合交付金は、国土交通省が地方自治体に配る交付金です。
道路や河川、公園などの事業ごとに分かれていた補助金を、ひとつにまとめる形で2010年度に作られました。
配分までの流れ
- 計画をつくる … 自治体が、地域の課題と目標を決めた、おおむね3〜5年の「社会資本総合整備計画」をつくる
- 要望・申請する … 毎年度、必要な額を要望する。市町村の申請は、都道府県を通して国に上がる
- 国が配分する … 国交省が計画ごとに国費を配分し、額を示す(内示)
- 自治体が使い道を決める … 配分された額の範囲で、自治体が計画の中の事業に割り振る
配分額は何で決まるのか
国交相は、配分について「限られた予算の中で、地方公共団体からの要望や事業の進み具合、重点配分の対象かどうかなどを勘案して行っている」と説明しています。
国は毎年度、重点的に配分する分野を方針として示していて、その対象になるかどうかでも配分額は変わります。
そのため、年度によって配分額が上下すること自体は珍しくありません。
国会議員に配分を決める権限はある?
仕組みの上では、配分を決めるのは国交省で、国会議員が個別の自治体の配分額を決める権限はありません。
今回の焦点は、簗氏の発言どおりに予算が動いたのか、それとも予算が減った結果を自分の力のように話しただけなのか、という点です。
どちらだったとしても、支持しなかった地域の予算を削ったと口にしたこと自体が、問題として受け止められています。
各方面の反応
- 官房長官 … 9月30日に「事実の有無も含めて関係省庁において調査中」と説明。10月2日には、国交省で事実関係を確認中で、公表の時期は「現時点で申し上げることは困難」とした
- 国土交通相 … 「報道されているような形で道路予算が削減された事実はないと報告を受けている」
- 那須烏山市長 … 「自分を支援しない者への報復措置として予算カットをほのめかし、市民に不安を抱かせたことは断じて許されない。両市町の住民に対し、説明責任を果たされたい」
- 那珂川町長 … コメントを控えている
- 高市首相 … 5日、簗氏に「引き続き農林水産行政の推進に向けて、全力で仕事をせよ」と指示し、続投させる考え
- 民主改革の会 … 小川淳也代表は「任に値しない」と述べ、辞任を求めた
- 国民民主党 … 幹事長は2日に「事実であれば大問題だ」と述べた。玉木雄一郎代表は5日、行政がゆがめられたのではないかが問題の本質だとして、同じようなことがないか全省庁で調べ、国会に報告するよう求めた
- 公明党 … 選挙の応援の有無で税金の配分を変えるような発言は、あってはならないと批判。国交省の調査結果を早く報告するよう求めた
- 共産党 … 田村智子委員長は、辞任すべきだとしている
簗和生氏とは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 簗和生(やな・かずお) |
| 生年月日 | 1979年4月22日(47歳) |
| 選挙区 | 衆院栃木3区(自民党)。当選6回 |
| 初当選 | 2012年の衆院選 |
| 2026年2月の衆院選 | 栃木3区では敗れ、比例北関東ブロックで当選 |
| 主な経歴 | 国土交通大臣政務官、文部科学副大臣、自民党農林部会長など |
| 農水相就任 | 2026年9月17日、第2次高市改造内閣で初入閣 |
発言があったとされる5月は大臣に就任する前で、簗氏が「一議員としての活動」と説明していたのはこのためです。
今後の焦点
- 国交省の確認結果 … 2つの市町の配分額がなぜ大きく減ったのか、簗氏の関与があったのか。公表の時期は決まっていない
- 国会での追及 … 7日から各党の代表質問が始まり、来週は衆参の予算委員会が開かれる予定。働きかけはなかったという説明の真偽、閣僚としての資質、高市首相の任命責任が問われる見通し
- 進退 … 首相は続投を指示したが、野党の一部は辞任を求めている
- 地元への説明 … 那須烏山市長が求める、両市町の住民への説明があるかどうか
予算が実際に発言どおりに動いたのかどうかは、まだ確認されていません。
国交省の確認結果が出た段階で、あらためて確かめる必要があります。
まとめ
- 簗和生農水相が、那須烏山市と那珂川町の道路予算を「大幅にカットした」と発言したと報じられ、10月2日の会見でおおむね認めた
- 10月5日、音声が自分のものだと認め、発言を撤回して謝罪。高市首相の指示で続投し、辞任は否定
- 本人は「国交省に箇所付けの結果を問い合わせ、会合で報告しただけ」と説明し、働きかけは否定している
- 国の交付金は、那須烏山市が約63%減、那珂川町が約54%減。栃木県全体は約11%増。音声で挙げていた数字とほぼ同じ
- 野党の一部は辞任を要求。7日からの代表質問と来週の予算委員会で追及する構え
- 交付金は、自治体の計画と要望をもとに国交省が配分する仕組みで、国交相は「報道のような形で削減された事実はない」としている
- 未確定 … 予算が減った理由と、簗氏の関与の有無。国交省が確認中
記載は2026年10月5日時点の報道と公表資料に基づきます。

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