2026年6月11日(現地時間)、イラン軍が米国の空爆を受け、ホルムズ海峡の通航を全面遮断すると宣言した、と報じられました。SNSやニュースでは再び大きく話題になっています。
一方で、日本株・為替・原油チャートを当日見ると、思ったほど大きくは動かない、という印象を持つ人も少なくないでしょう。
本記事では、海峡封鎖が日本に与える影響の整理と、「ニュースは大きいのにチャートが静か」に見える理由を、WTI原油の日足チャートと公開データを軸に説明します。
※数値・チャートは執筆時点の公開情報・相場観察に基づきます。原油価格・為替は刻々と変わります。
いま何が起きているか|6/11の全面遮断宣言
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ狭い海域で、世界の石油・ガスの海上輸送ルートとして国際的に注目されやすい場所です。
| 時期 | 出来事(報道ベース) |
|---|---|
| 2026年2月28日ごろ | 米国・イスラエルによるイラン攻撃が始まる |
| 3月以降 | 海峡が事実上の封鎖状態に。通航量が急減 |
| 2026年6月11日 | イラン軍が全面遮断を宣言。商船・タンカーの通航禁止、通過試行は「発砲対象」とする警告も |
朝日新聞の社説では、封鎖から2カ月半以上が経ち、約1600隻規模の立ち往生や、船員の食料・水不足が深刻化している、と指摘されています。
日本への影響|3つの経路
日本は原油のほぼ100%を輸入に頼り、その約9割近くが中東・ホルムズ海峡経由とされる、と複数の分析レポートで整理されています。
① エネルギー調達・貿易
4月の貿易統計では、中東情勢の影響がはっきり表れています(東洋経済オンラインが財務省データを解説)。
| 項目 | 2026年4月(前年比) |
|---|---|
| 中東からの原油輸入量 | ▲67%(1979年以降で最少クラスの報道) |
| 中東からの原油輸入額 | ▲55.5% |
| 日本→中東向け輸出 | ほぼ半減 |
「タンカーが来ない」と headline になっても、統計への反映は数週間〜数カ月遅れることがあります。
チャートが静かでも、実体経済側ではすでに悪化が進んでいる、というズレが起きやすい領域です。
② 企業・製造業のコスト
東京商工リサーチ(TSR)の6月1〜8日実施アンケート(有効回答7,614社)では、次の結果が報じられています。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 事業活動にマイナスの影響 | 80.6%(前回78.7%から上昇) |
| マイナス理由1位 | 原油由来素材・原材料の高騰(73.3%) |
| マイナス理由2位 | 原油由来素材・原材料の調達難(59.7%) |
製造業向け調査では、6割超が「業績・事業継続に深刻な打撃」、コスト上昇を十分に転嫁できているのは4.5%にとどまる、という結果も報じられています(時事通信PR)。
→ 株価・為替が静かでも、企業のコスト負担は続いている、というのが日本側の実感に近い整理です。
③ 消費者・ガソリン
一般の人が最初に感じるのはガソリン価格ですが、ここにも「見え方を抑える」要因があります。
- 政府のガソリン補助金等により、ポンプ価格の上昇が目立ちにくい
- TSR調査では「ガソリン価格の高騰」を懸念する企業は、前回64.8%→今回41.3%と23.5ポイント低下(補助で一時的に和らいだ、という読み)
WTI原油が高止まりしていても、ガソリンがすぐ跳ねないのは、補助・在庫・価格転嫁のタイムラグが重なるため、と理解するとよいです。
WTIチャートで読む「初動は出た、今日は第2波になりにくい」

当日のチャートが静かに見える最大の理由は、大きな値動きがすでに2〜3月に出ているからです。
日足チャートの読み方(2025年10月〜2026年6月)
| 時期 | WTI(目安) | 意味 |
|---|---|---|
| 2025年10月〜2026年2月中旬 | 57〜70ドル前後 | 横ばい〜穏やかなレンジ |
| 2026年2月下旬〜3月初旬 | 一気に119ドル付近まで急騰 | ホルムズ危機の初動ショック |
| 2026年3月以降 | 90〜110ドル台で上下 | 高値圏でのボラティリティ |
| 2026年6月上旬 | 92ドル前後 | 直近は大きな足が少なく、ニュースより静か |
ポイント
- 57ドル→119ドルの急騰は、すでに市場が「海峡リスク」を織り込んだ結果
- 6/11の全面遮断宣言はエスカレーションだが、初出のときほどチャートは跳ねない
- 「今日動かない」≠「影響なし」。高止まりコストを消化している段階に近い
日本株・為替が当日静かに見える理由
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 織り込み済み | 2月末以降、同テーマで3カ月以上動いている |
| ニュース慣れ | 同種の見出しの再燃では、反応が鈍る |
| 見ている銘柄・通貨ペア | 日経225・USD/JPY以外(豪ドル絡み等)は、中東より各国指標が主役になりやすい |
| 政策・在庫 | 政府の在庫説明・補助金で、実体とマーケットの乖離が出やすい |
3月初旬には、ホルムズの実質封鎖を受け日経平均が前日比▲3.6%など大幅安になった、とアセットマネジメント会社のマーケットレポートでも整理されています。
その後は「危機継続+高値圏の原油」が前提条件になり、同じニュースで毎回暴れるフェーズからは一段進んでいる、と読めます。
「日本に影響なし」と誤解しやすいポイント
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 今日の株・円が静か → 大丈夫 | 企業の8割超がマイナス影響。決算・見通し修正は遅れて出る |
| ガソリンが大きく上がっていない → 原油高は嘘 | 補助金・在庫で目立ちにくい。WTIは90ドル台で推移 |
| 6/11のニュースは初めて | 2月末からの危機の続き。全面遮断はエスカレーション |
| 原油チャートが落ち着いた → リスク終了 | 119ドルから92ドルへは調整であり、57ドル時代より依然高い |
まとめ
- 6/11の全面遮断宣言でホルムズ海峡は再び大きなニュースになった
- 日本への影響は、原油・ナフサ輸入減、企業コスト増、調達難など実体経済側ですでに出ている
- 当日の株・為替・WTI日足が静かなのは、2〜3月に初動(57→119ドル)が出たあとの高値圏だから
- ガソリンが目立って跳ねないのは、補助金等で見え方が抑えられている面もある
- 「ニュースは大きいのにチャートが動かない」=影響なしではなく、第2波の反応が鈍い段階、と読むのが近い

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